2009年01月09日
沈まぬ太陽を読んで(その4)
「沈まぬ太陽」 続
日本に帰ってアフリカ転勤の命令について、真意をただすために、本国の桧山社長に
直談判に行った恩地でしたが、社長は会社にはいませんでした。
かつて、組合活動時代にともに苦労をした仲であった、同僚の行天四郎は、その後
例の堂本部長にそそのかされ、組合活動を離れ、会社のエリート街道を歩んでいました。
会社内で行天に出会うと、恩地は行天に、「イランでは元気でやっているか。社長は病気で
入院中だ。いつまでの組合活動をやってないで、早く目を覚ませ」と冷ややかに言われます。
社長の病院まで駆けつけると、社長は、重態で面会謝絶の状態ですが、恩地が見舞いに
いくと、桧山社長はかつての面影もなく、恩地の手を握って「済まない、済まない」と涙を
流すだけです。
会社の実権は、すでに桧山社長には無く、その後運輸省からの天下りである小暮社長
へと移っていきます。
事態を察した恩地は、今度は家族をアフリカまで連れて行くわけにはいかないと判断し、
テヘランで家族と別れて一人、ケニアのナイロビに行くこととなります。ナイロビにはもちろん
国民航空は就航していません。就航していないところへ行って何をせよというのか。
会社のひどい仕打ちにはらわたの煮えくりかえる思いをして、家族と別れの時を迎えます。
別れのシーンが泣けます。
テヘランの冬の季節。夜の10時発の飛行機で妻と子供2人が日本に出発するのですが、
-------------------------------------------------------------------------
恩地は子供達のオーバーの襟をたててやり
「じゃ、二人とも元気で行くんだよ」
と声をかけると、
「お父さん、夏休みに会おうね、さようなら」
子供達は手を振ったが、妻はこみ上げてくる思いに耐えかねているのか、足を止め
「お体を大切に」
一言そう言い、雨にぬれる子供をかばうように傘をさしかけた。木造モルタルの古びた
空港の建物から、飛行機が駐機しているところまで、二人の子供を連れて歩いていく
妻の背中は、ずぶ濡れになっていた。
「りつ子!」
妻の名前を読んだが、聞こえないのか、振り返らない。その背中は「解りました。
あなたはどうぞ、ご自分の信じる道を歩んでください。」と無言で答えているようであった
「克己!、純子!」
二人の子供の名を呼んだが、降りしきる雨の中で、子供達も振り返らなかった。飛沫で
白く煙る中を妻と子の姿が、しだいに遠ざかっていく。
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この「沈まぬ太陽」が何度も映画化の話がもちあがっては、なぜ、なかなか実現しないのか。
理由は明らかであろうかと思います。その内容が実話に近く、利害関係者が多いからです。
アフリカの転勤先は、ケニアのナイロビです。 (続)
日本に帰ってアフリカ転勤の命令について、真意をただすために、本国の桧山社長に
直談判に行った恩地でしたが、社長は会社にはいませんでした。
かつて、組合活動時代にともに苦労をした仲であった、同僚の行天四郎は、その後
例の堂本部長にそそのかされ、組合活動を離れ、会社のエリート街道を歩んでいました。
会社内で行天に出会うと、恩地は行天に、「イランでは元気でやっているか。社長は病気で
入院中だ。いつまでの組合活動をやってないで、早く目を覚ませ」と冷ややかに言われます。
社長の病院まで駆けつけると、社長は、重態で面会謝絶の状態ですが、恩地が見舞いに
いくと、桧山社長はかつての面影もなく、恩地の手を握って「済まない、済まない」と涙を
流すだけです。
会社の実権は、すでに桧山社長には無く、その後運輸省からの天下りである小暮社長
へと移っていきます。
事態を察した恩地は、今度は家族をアフリカまで連れて行くわけにはいかないと判断し、
テヘランで家族と別れて一人、ケニアのナイロビに行くこととなります。ナイロビにはもちろん
国民航空は就航していません。就航していないところへ行って何をせよというのか。
会社のひどい仕打ちにはらわたの煮えくりかえる思いをして、家族と別れの時を迎えます。
別れのシーンが泣けます。
テヘランの冬の季節。夜の10時発の飛行機で妻と子供2人が日本に出発するのですが、
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恩地は子供達のオーバーの襟をたててやり
「じゃ、二人とも元気で行くんだよ」
と声をかけると、
「お父さん、夏休みに会おうね、さようなら」
子供達は手を振ったが、妻はこみ上げてくる思いに耐えかねているのか、足を止め
「お体を大切に」
一言そう言い、雨にぬれる子供をかばうように傘をさしかけた。木造モルタルの古びた
空港の建物から、飛行機が駐機しているところまで、二人の子供を連れて歩いていく
妻の背中は、ずぶ濡れになっていた。
「りつ子!」
妻の名前を読んだが、聞こえないのか、振り返らない。その背中は「解りました。
あなたはどうぞ、ご自分の信じる道を歩んでください。」と無言で答えているようであった
「克己!、純子!」
二人の子供の名を呼んだが、降りしきる雨の中で、子供達も振り返らなかった。飛沫で
白く煙る中を妻と子の姿が、しだいに遠ざかっていく。
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この「沈まぬ太陽」が何度も映画化の話がもちあがっては、なぜ、なかなか実現しないのか。
理由は明らかであろうかと思います。その内容が実話に近く、利害関係者が多いからです。
アフリカの転勤先は、ケニアのナイロビです。 (続)
Posted by さわちゃん at 22:58│Comments(0)
│さわちゃん
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