「沈まぬ太陽」続編
希代の大惨事となった、墜落事故ですが、遺体収用作業がつづきます。警察では
もうこれ以上探しても遺体は出てこないだろうというところまで捜索を続けるわけ
ですが、事故調査が終わってからでも、山のあちこちから、遺骨が発見されます。
恩地元は、遺族対応係として、大阪支店に配属を命じられます。すでに、御巣鷹山
の現場や体育館で家族と遺体との面会に立ち会ってきたのですが、会社の責任を
感じて、遺族対応に率先して取り組み、遺族との補償交渉をすることになります。
会社側では、あらかじめ死亡した人の年齢や、役職などを勘案して補償額を算定
し、遺族に提示し、早く決着をつけようとするのですが、初めからすんなりと補償交渉
に応じる遺族はありません。みんな、国民航空に家族を殺されたと思っているわけで
すから、けんもほろろの対応をされます。
事故時の社長であった堂本社長は、事故の責任をとって、辞表を提出したのですが、
当面は、遺族の一人ひとりに謝罪行脚をすることとなります。
ここで、数々の人間ドラマが展開されます。事故で死亡したある中小企業の社長宅
では、奥さんが堂本社長を、お墓のところまで連れて行って、主人に謝らせるシーン
がありあす。お墓に向かって土下座してほしいと奥さんに言われ、やむなく社長は土
下座をするのですが、このようなことが、うわさになって、ほかの遺族に伝播しないだろう
かと、会社の幹部は心配します。
遺族対応の最前線でつらい思いで奮闘する恩地ら社員と、国民航空で、いまだに
事故の責任を感じることもなく、ぬくぬくと保身と金と地位のために生きている幹部
社員との対比が描かれています。
遺族の中でも、特に妻と幼いこども3人を一度に亡くした会社社員の事例は悲惨です。
本人が海外赴任中に事故が起きたのですが、初めは何かの間違いだろうと思って
気楽に日本に帰ってきたのですが、事態の深刻さにようやく気が付きます。楽しい家族
生活があるはずなのに、家に帰っても孤独地獄がまっているだけです。
そのうちに、遺族の間で、悲しさつらさを共有するために団結しようという動きが発生し
遺族会ができるのですが、この社員が団長を引き受けることとなります。
遺族会のことは「茜雲」という本になって出版されています。